廃朝鮮学校 「都会の真空で、ぼくらは。」
廃墟探索の、原点に近い、そんな感覚を覚えるある日。ひっそりとしたコンクリートの廃校があると昔から聞いていた。それは朝鮮学校の廃墟と聞いていたが、実際は朝鮮総連の教育研修機関だった。総聯の幹部、学習班を養成する学校として創立された。全寮制で外出は禁止、毎日のスケジュールは6時 :起床8時 :朝食9時~12時 :学科12時 :昼食13時~17時 :学科17時~18時 :総括18時 ...
小雨の中の廃校 - Abandoned school in light rain -
細長く続く雨の日は、いつもの距離感をほんな少しだけ縮めてくれる、そんなドラマが生まれる気がする。勿論気がするだけで終わるものだけど。朝からしとしとと、長細く雨が降り続くような日だった。畑ばかりの片田舎に、そこは存在した。このまま畑に侵食されてしまうんじゃないだろうか。雨風の侵食は時と共に建築を蝕む。此処もこうして、残り続けていられるのは一つの奇跡なのではないだろうか。頭に触れそうなすれすれな高さで...
忘れ里の廃校 - Abandoned school of forgotten places -
暑気悶々 瞬の避暑朝から三〇度を超える、猛烈夏日。山の奥だから下界より涼しい事を期待した私が馬鹿だった。密閉された(しかし所々に隙間のある)忘れられた空間は、文字通り蒸し風呂状態だった。暑い。暑すぎる。十万石って言ってる場合じゃない、気を抜くと死ぬやつだ。止め処なく汗が流れ落ちる。じんわりと、蒸される。でも、なんだろう、なんと言ったら良いか分からないけど、目を見据えた先の「瞬」の間に汗がすっと引く...
8月15日は廃校の日。 - 緑の廃校 -
緑の廃校。と、呼ばれている場所はかねてから西に存在するが、東にも存在する。床が見事に苔むした、大きな木造校舎。白いワンピースを着た女の子と、望郷心を抱き北へ、東へ。雨水の浸食により屋根が腐り、床が腐り、一階はむんわりとした湿気で充ち満ちている。恵まれた偶発的環境により、苔生し美しい緑の絨毯が生まれた。ここまで見事な緑の絨毯はなかなかない。と、思う。二階は腐食こそ酷いものの日当りが良い晴れ空の下のせ...
廃蟹と魑魅魍魎 海の聴こえる廃校 - Abandoned evil spirits of mountains and rivers school -
雲烟過眼否魑魅魍魎余韻嫋嫋海が聴こえる廃校。浪漫溢れるロケーションになる筈だった。生憎の怒涛の豪雨、荒れ狂う海に交通封鎖と為らぬか心配しかなかった。全くもって爽やかじゃない。ぬくもりある風情のある木造校舎。愛されてきたのだろう去りゆく人々の想いが綴られていた。しかし一番奥の方…そこだけは、異空間だった。明らかに、他と異なる空気。刺すような視線を背中にビシビシ感じる。背筋がぞわりとして、鳥肌が立つ。...
廃朝鮮学校 䎛 二
自分の周りだけかもしれないし悪魔で個人的な感覚で思う事だけど、今年は蝉の声が例年より少ないな、と感じる。何処へ行っても。朝方眞午夕暮も、蝉の声が小さく、少ない。[ 続 ]...
坂本小学校 - 斜陽の頃 七
翌日の放課後。Rちゃん、Sちゃん、そして勇気ある(野次馬心・怖いもの見たさ・ノリ)数名のクラスメイトで、ボイラー室へと向かった。3枚の写真と、恐らく自宅にストックしてあったと思われる“普通の”塩を持って…写真は、ボイラー室脇の砂利に埋めた。塩を撒いて、Rちゃんが言う通り「ごめんなさい」と手を合わせた。手を合わせ、目を瞑る。沈黙。と。「キャーーーーー!!」突然、誰かが叫んだ。目を開ける、誰かが走り去る、皆...
坂本小学校 - 斜陽の頃 六
[ 続 ]「ねぇ」ミステリー新聞がはがされたその日、Rちゃんに話しかけられた。「ああ、新聞、残念だったね。面白かったのに。皆も残念がってたよ」「その新聞なんだけど」後ろから、Sちゃんも口を開く。「写真…、どうしよう」心霊写真を撮ったら、呪われる。学級文庫で一番人気の心霊本に、確かにたしかにそう書いてあった。「どうしよう…」「うーん…お父さんが心霊写真撮れた時は、ネガごと燃やせって言っていたけど…。あの本に...
坂本小学校 - 斜陽の頃 五
[ 続 ]ミステリー係のSちゃんとRちゃんは、カメラでボイラー室を撮りフィルムを現像に出した。出来上がった写真は、今でも忘れられない。ボイラー室の窓に写る無数の顔。1枚だけではない。3枚撮れた。一際目立つのは目を見開いたように見える赤くて大きな歪んだ顔。3枚に、共通して写っていた。それを取り巻くように写る、無数の白い顔。いずれも、目を大きく開けこちらを見ているように感じる。暖かな日差し萌黄の頃、この季...
坂本小学校 - 斜陽の頃 四
[ 続 ]小学校の旧校舎には、こんな噂があった。校舎裏にあるボイラー室がある場所は、元々馬の屠殺場だった、と。昔、使えなくなった馬を殺す場所が、ここにあったんだ、と。だからあそこには、幽霊が出る。初めてのクラス替え、僕は三年四組になった。四組だけは、イヤだったんだけどな。4と言う数字が、「死」を連想させる。四年生になったら四年四組、死ぬ死ぬだよ、最悪じゃないか。小学生らしいくだらない理由。生き物係、...
坂本小学校 - 斜陽の頃 三
[ 続 ]T先生は依怙贔屓が大好きだった父兄からは密かに子供のお父さんに色目を使っているとヒソヒソされていたらしいいつも乳首が浮いているから誘っていると何て酷い言われよう先生は朝っぱらから開口一番「何で貴方達は言う事を聞かないの!」とヒステリックに泣きわめいたうるさかったなぁ、なんだったんだろうあれあれは我が校の汚点だよある日朝学校に来たら、教室に先生のパンツが落ちていた生成り色のレースのついた大き...
坂本小学校 - 斜陽の頃 二
[ 続 ]何の感動もなかった小学校の卒業式皆は帰りに遊んで行こうと言っていたけど僕はさっさと家に帰ってゲームがしたかったんだあの後電話で怒られたような気がする大ッ嫌いだった6年2組あれだけ仲良しだった(はず)のクラスメイトも中学になったらただの他人ほっとした...
心憶 S小学校 2
大人になってから一度も顔を合わせていない友達に会いに行くより…廃校に、会った事もないのに何故かよみがえるような懐かしい思い出に会いに行く方が、ずっとずっと、楽しいんじゃなくて、“楽”なんだ。小学生の頃、大人になるって何だろう、そう考えても答えは出なかった。今も出ていないかもしれないけど、その一つとして、様々な形の“別れ”を通過していく事もある、かもしれない。ありがとうとごめんなさいを言えない大人は嫌い...