遺言 1
きっかけは、何だったのだろう。何て事もない、瑣末な事だったと思う。始まりなんてものは、大体が、そんなものだ。その小さな躓きが、時間の経過と共に波紋のように、次第に大きくなりしまいに津波のように押し寄せようとは、誰もがその時は、考えもしない。当たり前、だけど。...
□□□□ #037
遅咲きの桜の頃縁日に行けるかな、かな、無理言う迄も無く季節は花見行く先々に彩る縁日。折角一眼レフ持ってるのになんで使わないの。おっさんはiPadでパシパシ写真を撮っていた。俺にはこれが一番しっくりくるんだ。iPhoneなら分かるけど、でっかいからそれ、使いにくそう。手に取った時なじむ感覚がある、その直感には従うべきなんだよ。大きなりんご飴を買ってもらった。大好きなりんご飴をさて食べるぞと意気込み袋から出し一...
坂本小学校 - 斜陽の頃 七
翌日の放課後。Rちゃん、Sちゃん、そして勇気ある(野次馬心・怖いもの見たさ・ノリ)数名のクラスメイトで、ボイラー室へと向かった。3枚の写真と、恐らく自宅にストックしてあったと思われる“普通の”塩を持って…写真は、ボイラー室脇の砂利に埋めた。塩を撒いて、Rちゃんが言う通り「ごめんなさい」と手を合わせた。手を合わせ、目を瞑る。沈黙。と。「キャーーーーー!!」突然、誰かが叫んだ。目を開ける、誰かが走り去る、皆...
坂本小学校 - 斜陽の頃 六
[ 続 ]「ねぇ」ミステリー新聞がはがされたその日、Rちゃんに話しかけられた。「ああ、新聞、残念だったね。面白かったのに。皆も残念がってたよ」「その新聞なんだけど」後ろから、Sちゃんも口を開く。「写真…、どうしよう」心霊写真を撮ったら、呪われる。学級文庫で一番人気の心霊本に、確かにたしかにそう書いてあった。「どうしよう…」「うーん…お父さんが心霊写真撮れた時は、ネガごと燃やせって言っていたけど…。あの本に...
坂本小学校 - 斜陽の頃 五
[ 続 ]ミステリー係のSちゃんとRちゃんは、カメラでボイラー室を撮りフィルムを現像に出した。出来上がった写真は、今でも忘れられない。ボイラー室の窓に写る無数の顔。1枚だけではない。3枚撮れた。一際目立つのは目を見開いたように見える赤くて大きな歪んだ顔。3枚に、共通して写っていた。それを取り巻くように写る、無数の白い顔。いずれも、目を大きく開けこちらを見ているように感じる。暖かな日差し萌黄の頃、この季...
坂本小学校 - 斜陽の頃 四
[ 続 ]小学校の旧校舎には、こんな噂があった。校舎裏にあるボイラー室がある場所は、元々馬の屠殺場だった、と。昔、使えなくなった馬を殺す場所が、ここにあったんだ、と。だからあそこには、幽霊が出る。初めてのクラス替え、僕は三年四組になった。四組だけは、イヤだったんだけどな。4と言う数字が、「死」を連想させる。四年生になったら四年四組、死ぬ死ぬだよ、最悪じゃないか。小学生らしいくだらない理由。生き物係、...
坂本小学校 - 斜陽の頃 三
[ 続 ]T先生は依怙贔屓が大好きだった父兄からは密かに子供のお父さんに色目を使っているとヒソヒソされていたらしいいつも乳首が浮いているから誘っていると何て酷い言われよう先生は朝っぱらから開口一番「何で貴方達は言う事を聞かないの!」とヒステリックに泣きわめいたうるさかったなぁ、なんだったんだろうあれあれは我が校の汚点だよある日朝学校に来たら、教室に先生のパンツが落ちていた生成り色のレースのついた大き...
坂本小学校 - 斜陽の頃 二
[ 続 ]何の感動もなかった小学校の卒業式皆は帰りに遊んで行こうと言っていたけど僕はさっさと家に帰ってゲームがしたかったんだあの後電話で怒られたような気がする大ッ嫌いだった6年2組あれだけ仲良しだった(はず)のクラスメイトも中学になったらただの他人ほっとした...