西海橋水族館 栄華は水煙と成りて 2
2012
08
「ねぇ、ロク君。
人ってね、自殺したら、何処に行くと思う?」
「何処?…天国?」
「んーん。
何処にも
何処にも、行けないのよ」

いつからヨヲコは、こんな喋り方をするようになったのか。
いつから、こんなにもか細く、掻き消えてしまいそうな鈴鞠のように、
小さく、小さくなってしまったのか。
「何処にも行けないの」

「縛られちゃうんだって」
「何に」
「神様に」

「神様が、その場所から離れる事を許してくれないんだった。
離してくれないんだって。縛られちゃうんだ。
だから、天国、行けないの」
「…そうなると、どうなるの?」
「さみしいの」

「さみしい、さみしい、って、ずっと、泣くの。
でも泣いても泣いても、真っ暗なの。
手を伸ばしても、何処にも届かないの。誰も握ってくれないの」
「だからね、ロク君」
「海の側がいいの」
続。



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