柬蒲の黄昏 -プノン・チソール- 1
2014
18
毛施淑姿、黄昏に消えゆ





上京したばかりの頃、恋人ととある写真展を見に行った時一之瀬泰造の写真集がそのギャラリーに置いてあった。
本を捲りながら彼奴は「俺は写真なんてよく分からないし芸術も何も興味無いけど、でも、一之瀬泰造の写真だけは好きなんだ」と言った。
程なくして一之瀬氏の著書を借り、転げ落ちるようにハマりその人柄、写真の魅力に引きずり込まれていった。
当時は私も写真なんてやっていなかったけど、なんだろう、心の、モノツクリの原風景のひとつにこの時から刷り込まれたような気がする。
それから、だった。彼の殉職の地へいつか行こうと思ったのは。
照れくさい話しだが、私にも、彼の想うアンコールワットのような存在の場所が、ある。
何処だか言うときっと馬鹿にされるだろうから、死んでも誰にも言わないけど。
いつか、そう遠くないうちに行ってやろう。そう、想う。
[ 続 ]



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