Чорнобиль тринадцять -チェルノブイリ 13- Самосели 還りし者達
2015
21

原発事故により禁断の領域と化したチェルノブイリ。
一度離れた愛しい故郷に、再び戻ってきた人々がいた。
人は彼らの事を、サマショールと呼ぶ。



日本語では自発的帰郷者、帰村者等とも表現される彼らの中には事故当初から疎開を拒み、移住先の生活になじめず30km圏内の住み慣れた村に戻ってきた者もいた。
基本的に立ち入り禁止区域に入るには、事前登録等手続きが必要とされ、退出の際は全身の放射能検査を行い、高い数値が出た場合は服を洗濯する場合もあるのだが、彼らは政府を振り切り許可を得ず住み着いている。が故に、“暗黙の了解”の形で現状が成り立っている。(勿論、今現在からチェルノブイリに移住しよう、と思っても到底無理な話しだ)
強い望郷。彼らを突き動かすその念は、福島で被災し移住せざるを得ない人々に共通するものがある。



チェルノブイリの立ち入り禁止ゾーンは、その殆どが森だ。
深々と木々に包まれ、乾燥する季節は時として自然火災を巻き起こす。
無人の家は朽ちるが侭に自然に還る。
人も居らず静寂に包まれた安住の地。
サマショールの殆どが高齢者だ。時の流れには逆らえない。
サマショールの老婆の手は、しわくちゃでとても力強かった。
目の青色は吸い込まれそうな優しい色をしていて、何処か寂しそうだった。
嗄れた声は往年の逞しさがありドラ猫のように愛嬌があった。
持て成しは素朴ながらも豪勢で笑顔が弾けた。
抱きしめるそのぬくもりは温かく、切なかった。

[ 続 ]



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