未承認国家・アブハジア自治共和国 -Аҧсны Аҳәынҭқарра- 廃墟の住人のおもてなし
2016
14
アブハジアの、とある巨大廃墟を撮影・散策していた時の事。
立派な建築物だ…惚れ惚れする程その外観も美しい。
内部に入る場所を見つけた。
この日の天気予報は雨だったが、見事に晴れた(途中通り雨だけはあったけど)。神様有難う、差し込む光が柔らかく美しい。
階段を上がり3階で撮影している時だったろうか。
廊下で背の高い男性に遭遇した。
あ。
取り敢えず挨拶をする。
男性は陽気に挨拶を返す。平日の真っ昼間だというのにえらく酔っぱらっている。
聞くと、ここに住んでいるという。
あー…
ごめんなさい。
いいよいいよと男性は言う。何処から来たの?日本です。日本!
「コンニチハ!」「ハラキリ!!」「カミカゼ!!」「ドゲザ!!」
…彼の知る日本語のレパートリーは、この4つだった。ちょっと偏りがないか?!
家においで!と言うので、(この人は大丈夫だな)という己の直感に従い着いて行く事に。
自分の直感は、幸い大概正しい。なんてリスキーなんだ!とよく怒られるが、感覚人間で今迄生きて来てしまっているし、今後もきっとそれは変わる事がないだろうから仕方無い。

廃墟の一室を開けると、そこは完全に生活空間だった。
奥様が吃驚したような顔で男性に問うが、すぐに笑顔に変わった。
ようこそ、と。

水は汲み置きのものを使い、電気は何処かから引いてきている。
調理器具も揃っているし、冷蔵庫には食材も揃っている。
冷やしたきゅうり、トマトの簡易的サラダを頂く。お菓子、紅茶、お酒。
普通におもてなしされてしまった。

調理スペースはベランダ。のんびりと寛げるソファもある。
この日みたいな晴れの日は、ベランダでまったりとおしゃべりするのに最高だ。

可愛い住人も一緒だ。

旦那さんは現地人、戦争で父と弟を亡くしたと言った。
奥さんはモスクワのご出身。
何故そんな大都市から、こんな辺鄙な場所へ流れ着いたのか。
そして何故こんな廃墟に住んでいるのか。
そこにはきっと様々なドラマがあるのだろう。
人にはそれぞれ、事情や理由がある。
荒波を乗り越えたからこそ、誰かに優しくも出来るのだろう。
訳の分からない突然の異国の侵入者をもてなしくてくれて、本当にありがとう。

しかし旦那さん、「ケーキ買ってくる!!待ってて!」って言って出て行ったのに、買って帰ってきたのは何故かバナナとアルメニアンコニャックだった…(笑
[ 続 ]



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