日帝残滓・三菱列 2
2016
25
小さな家が長屋のように連なるレトロな光景。
現在社宅の存廃論議が持ち上がっている。

スラム化した治安の問題。景観美化の問題。改装を推進する主張。完全撤去の主張。歴史的意義の為保存をする主張。




当時の仁川では珍しく下水道が完備された建物であったという三菱列社宅。
この日帝残滓の痕跡が建て替えられる日も、そう遠くないのかもしれない。





しかしこの住宅街の中に入ると、街中である事にも関わらず妙な静寂に包まれる。
周りの音と隔絶された空間に迷い込んでしまったような錯覚を覚えるのだ。
見えているはずなのに見えない。
見えない壁に阻まれているような。


ああ、この国の“真空地帯”なのだろうなここは。
スクラップ&ビルドを繰り返す亜細亜の街角。

九龍村の住宅は、廃墟と化したものも少なくない。
住人を失った家は役所の手入れがすぐ入るのか、網がかけられ立入禁止となっている。





もう少し散策を続けようとおも思ったが、夥しい数の小蝿に心が折れる。

一期一会。
実はここ江南区には、もう一つスラム街がある。
九龍村から徒歩15分程。
駅の目の前にある公園内に入っていく。

鬱蒼と茂る植物、湿度がじっとりと上がるような気がする。
ダルト近隣公園。
団地と教育施設に囲まれた場所だ。

フェンスに挟まれた狭い通路を抜けた先に。

公園に広がる不法占拠バラック群。

ダルト村もまた、立ち退き要請が出されているらしいが…
光と陰、両方の側面を色濃く持ち合わせる大都市ソウル。
其處は天国か地獄か。色々と、思う事はあるが、ここは口を噤んで幕を降ろす事にしようと思う。

秘湯めぐりと秘境駅 旅は秘境駅「跡」から台湾・韓国へ (実業之日本社文庫)
スポンサーサイト