死して尚弄ばれる - 廃火葬場 -
2016
24
人間の死体のにおい。というものは、独特だ。
例え葬儀の為の防腐処理を施したとしても、5日も経てば頬は重力に負け、遺体は全体的に水分が抜けたかのように「ぺっそり。」としている。肌は土色となり「ああ、いよいよだな。」としみじみ思ったものだ。
穴に詰めた脱脂綿は体液の色に染まり、気にすればにおいも感じ取れる。
動物。とは違う、人間。のにおい。
それ自体には、何の感傷も抱かなかった。祖母の葬儀。
祖母は、私がたまたま帰郷したその日に、亡くなった。
危篤の連絡を受け、病院に駆けつけた時には心肺停止した直後だった。まだ、生のぬくもりが残っていた。
「あいちゃんの事を呼んだのかもね」叔母は言った。
祖母は、誇り高い女性だった。凛と、毅然としたハンサムな女性だった。
だからきっと、「上へあがってしまったら。」下の事など気にせず己の道を更にまっすぐに、歩んでいったのではないだろうか。
私が廃墟に行っている事は、知らずに祖母は死んだけど、知ったら知ったで「あれまぁ天晴れ。」などとカラッと笑うに違い無い。
夏空の真っ赤な太陽すら素手で吹き飛ばしてしまいそうな強い女性だった。












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