国境を越え続けて、日常 - アルメニアとアゼルバイジャンの停戦地帯 -
2017
14
アルメニア北部を走行している時だった。
地図を見ていて気がついた。
「この道路、アゼルバイジャンの領土内も通っていく…」


そして飛び地もある。

隣接するアルメニアとアゼルバイジャン、両国の間柄は最悪だ。
両国の国民は両国間を行き来する事が出来ない。国境は、閉ざされている。
上記の飛び地にあった村は92年アルメニア軍に占領され元々いたアゼリー人達は追い出されてしまった。

スマホに表示される地図と、現在走る景色を照らし合わせながら、地図上での「アゼルバイジャン領土。」の道路を走っている事を確認する。
やはり国境沿いだからか、一帯は廃墟化した村々、遺棄された住居。
そして迷彩柄の四角い建築物。軍事施設だ。
大陸性の乾燥した気候の為大地は枯れた草木に包まれている。
アルメニア側からアゼルバイジャン側を車の中から撮影しようとすると「ダメだ」当たり前だが制止された。
「スナイパーが見張っているから駄目だ」と。
ただ、「教会だけなら大丈夫だ。短い時間で済ませて」
アゼルバイジャン領土内にある、廃墟となったアルメニア教会。これだけは、撮る事が可能らしい。
車の中から窓を開け手短にシャッターを切る。

アルメニアはキリスト教の国で、アゼルバイジャンはイスラム教の国だ。
アゼルバイジャンのムスリムの在り方は非常に寛容で、アゼルバイジャンの街行く女性もこれと言ってヒジャブを被っているわけでもない、ミニスカート姿の女性もいる。
ナゴルノ=カラバフにも、そういえば民族浄化はされたけどムスリムのモスクが残されていたな…しかも施錠されきちんと管理されたモスクも見られた。
この、対立する国の間での、赦されし宗教の在り方。

この一帯は基本的に、車を停め降りる事は出来ない。
殺伐と荒涼とした国境沿いをひたすら走っていく。

国境近くの、アルメニア領土内の教会。
アルメニアは信仰深い人がとても多い印象だ。
ソ連製のボロ車にもトヨタ製の車にも、どんな車にもきちんと十字架がぶら下げてあり、通り過ぎた教会の前で十字を切る人がとても多い。




世界は曖昧な渦の中、回り続ける。



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