虚ろな巨躯、国民の館…議事堂宮殿 - Casa Poporului ( Palatul Parlamentului ) -
2018
05
何処と無く暗雲立ち込めるように見える、不穏な空気が拭えぬ街・ブカレスト。
東欧(それ以外のヨーロッパでも)に付き物な“ロマ”に気をつけろと注意される。
カメラをさげていると取られるぞ。と。
ロマ…ジプシーたちに対して、私は特別差別意識は持っていない。
しかし時にして、思いもよらぬ罵声を彼らから浴びせられる時もある。
余り気に留める事はないが、彼らの紡ぐ未来は、今とさして変わらぬもののような気がする。

ブカレストの街を歩いていると嫌でも視界に入ってくる建物がある。

余りに巨大な、国民の館…議事堂宮殿だ。

彼の悪名高き大統領、チャウシェスクの私利私欲権力誇示の愚かな象徴。
建築物としてはペンタゴンに次いで世界で第2位の大きさを誇る。
外周をぐるりと歩いて見てみたが……、ほとほと疲れた。

国民の館は1984年に着工開始、昼夜を問わず建設が進められチャウシェスク大統領自身が現場を視察し進行状況のチェックなど指示を下したという。
国民には貧しい生活を強い、己らは贅を尽くした煌びやかな生活を送り続ける。
チャウシェスク独裁政権は1960年代から80年代にかけての24年間に渡って続いた。
しかし1989年12月に起きたルーマニア革命でチャウシェスクは完全に失脚、政権は崩壊。
ついには12月25日、逃亡先のトゥルゴヴィシュテにおいて革命軍の手によって妻エレナとともに公開処刑に処された。銃殺刑だった。未だ嘗て、公開で銃殺刑に処された大統領など存在しただろうか。


現在国民の館はチャウシェスクの負の遺産として残されており、観光地として開放されている。(有料)
楽しそうに見学している観光客を見ていると、暗黒時代が存在していた事など忘れてしまいそうになる。
彼によって惨殺された国民は6万人以上と言われている。
現在でも負の遺産は引きずられたままであるのが現状だ。
彼が推し進めて来た政策によって発生した孤児“チャウシェスクの子供たち”、劣悪な衛生環境により発生した大量の子供達のエイズ感染、大量の野良犬。
「ブカレストは危ない街だから気をつけて」
地元の人々に悉く言われた。
この街に本当の安寧が訪れるのは、いつになるだろう。
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