第二次世界大戦を忘れる事なく…ユーゴスラビアの痕跡、ストーンフラワーモニュメント(石の花) - Yugoslavia's remnant Cvjetni spomenik "Stone Flower Monument" -
2018
28
あれ程天気が良かったのに、どんどん雲行きが怪しくなってきた。
遠目に見ゆる目的地。あれだ。本格的に雨が来る前に。

翼を広げたかのような。大きな花びらを咲かせたかのような。
正解は後者だ。
スートンフラワー(石の花)。
第二次世界大戦中、絶滅収容所で処刑された数十万人の人々を慰霊するモニュメントだ。
戦争の悲惨さと、自由の尊さを忘れる事なく生きていく事を。
というのは大義名分で、概ねユーゴスラビアの政治的プロバガンダとして造られたのが真意だろう。

ストーンフラワーはベオグラード出身の建築家、アーバニスト(urbanist。都市計画の専門家)、エッセイストであるボグダン・ボグダノヴィッチ(Bogdan Bogdanović)によりデザインされた。
ベオグラード市長として、第二次世界大戦時政治に関わった事もある人物だ。

石の花の内部に入った時、「ツツジの花の中を覗いた時を思い出すな…小さな虫になってその中に入ったら、こんな感じなのかもしれないな…」となかなか趣のない事を考えていたのは内緒の話しだ。

処刑された人々へ、戦争の犠牲者たちへ手向けられる花は絶える事がない。

私の願いは虚しく、程なくして大粒の雨が降り出した。
遠くで響く雷鳴。蒸し暑さがすっと引き肌寒さを覚える。
暫く花の中で雨宿りをした。
他に訪れる人は、さっと見てさっと出て行ってしまった。
コンクリートで出来た空間に静かに反響する雨音が心地よい。
静かだ。
ずっとここにいてもいいかもしれない、叶わないけれど。
雨は、思ったよりも早く止んだ。
うんざりするような蒸し暑さが戻ってきた。現実だ。

太陽が綺羅綺羅と照りつける。青空を飲み込む水鏡に映る石の花の何と美しい事か。
見とれてもいられない、餓えた無数の蚊の大群が雨上がりと共に私の血液を欲して襲いかかってきた。
手で振り払いながら、後ずさりしながら、それでもシャッターを切り続けた。
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