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SATIAN/39 -頽廃放浪記-

廃墟/旧共産圏/未承認国家/国内外の”世界の果て”へ。ヒトノココロノスキマをキリトル頽廃放浪記。

ボスニアの紛争跡、あえて残される廃墟 "リュブリャンカ・バンカ・タワー" - An Abandoned Building in Mostar(Ljubljanska Banka Tower) -

2018
02


その日首都サラエボは、雨だった。
サラエボ入りしてからどうにもグズグズご機嫌斜めな涼しい天候が続いていた。
が、モスタールの街へ来てみたらどうだろう。
スカッと快晴気温29度。



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至る箇所で道路工事中。
終わりが見えなさそうな工事に見えるのは自分だけだろうか。



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ネレトヴァ川の翠色が美しい。
ネレトヴァと言えばかの有名な『ネレトヴァの戦い』だ。
第二次世界大戦中の1943年初頭、枢軸国連合部隊によりユーゴスラビア全域で行われたユーゴ・パルチザン掃討作戦における戦いのひとつで、映画化もされている。



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ボスニアユーゴスラビアからの独立宣言後の1992年から1993年にかけ18ヶ月間、ユーゴスラビア人民軍(JNA)の包囲下にあった。
ユーゴスラビア人民軍が最初にモスタールを爆撃したのは1992年4月3日。続いて徐々に町を支配下に置いていった。
その痕跡は、紛争が終わり20年以上経った今も残っている。
いや、『残されている』と言った方が正しいだろう。



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嘗ての鉄道駅であったモスタール駅の跡。



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内部は木々が侵食し天然の植物園と化す。



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廃墟や寂れた場所にはこうして落書きも目立ったりするが、孫悟空の落書きはここ以外でも何箇所かで見られた。
ドラゴンボールはボスニアでも市民権を得ているらしい。



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ふと、遺棄されたままの高層ビルが目に入る。



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銃痕が血の薔薇を咲かせているかと思えば、空へ羽ばたく虫にもなる。
発想の転換が面白い。
紛争の激しさをこうして静かに物語る。



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シンプルだが、重たいメッセージが残る。
当時の若者が残したものだろうか。
日本で平和を何も考えなしに享受し続けた自分に、ここに被せられる言葉は見つからない。



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廃墟となったビルのすぐ隣には、人の営みがある。
時を止めた真空のような構造物は、無口であるが故に雄弁だ。



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このビルは紛争時、狙撃兵たちに利用されたスナイパー・タワーだった。
街全体を見渡せる好立地。一番眺めの良い場所だ。



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時折こうして探索者たちを迎え入れ、ただただに佇み続ける。
緑の侵食はここでも逞しい。



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モスタールの復興はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争終結の1995年以降急速に進み、歴史的建造物の再建も1999年には開始され2004年には殆ど完成しているとの事だ。こうして廃墟の残る箇所がある事を知らない観光客もいる。
もちろんボスニアの中には、こうした負の遺産を『あまり見て欲しくない』と思う人もいるかもしれないが、こうした負の遺産を見学するツアーも存在している。

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