再開発迫るタルトンネ・104マウル - 104 Village in Seoul, Korea -
2019
01
登山道への案内板。
ひとつだけ、英語表記が添えられていないものがある。
104マウル。
それはタルトンネと呼ばれる場所。

高台より摺鉢のような斜面に這う街を臨む。
見るからに寂れた光景に一瞬歩みが止まる。


104マウルは、1960年後半の都心開発により清渓川(チョンゲチョン)等から移転を余儀なくされた人々住み着いた街だ。

こうした集落、タルトンネの歴史は1950年代に遡る。
日本の支配下から解放されるのも束の間朝鮮戦争勃発により国土は荒れに荒れ果てた。
難民と化した国民は都市部に集まり仕事を求める、そして戦争により荒れ果てた山の斜面にバラックを建て不法に住み着くようになった。

ソウル最後のタルトンネと呼ばれる104マウルだが、再開発の波が迫っている。
すぐそこまで迫り来る高層マンションの名は「現代」。
苦い笑いしか浮かばなかった。

経済成長を支えてきた老兵たちがこの街には数多く住んでいる。
未だ都市ガスが行き渡らないのか、街では積み重ねられた練炭をよく見かける。





貧民街の辛い日々を少しでも明るくする事が出来たら、という趣旨で始まった壁画アート。

ファーストフードの箱の中にはチキンの骨が残っていた。
私が立ち去った野良後猫はそれを静かに齧っていた。



また、登山道の分岐点へと出てしまった。
別な道から104マウルに戻ろう。

塀もガードレールもなく落ちればそこは何メートルも下の瓦礫にダイブ…そんな歩道。


廃墟と化した家も少なくない。

ネギや白菜、唐辛子などの野菜を育てている家庭もよく見かけた。



途中ソウル在住のカメラマンと出会った。
彼は奥さんと一緒にこの懐かしき光景(日本の昭和レトロのような感覚だろうか?)をカメラに収めていた。
[ 続 ]
TRANSIT(トランジット)42号 韓国・北朝鮮 近くて遠い国へ (講談社 Mook(J))
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