ソ連の秘密廃軍事都市 - Secret Military City of The Soviet Era in Latvia , Zeltini Missile Base -
2019
08
「どうしてそんな所に行くの」
スクランダ1で出会った軍人は言った。
「ソ連に呼ばれているから」
「狂ってる」

そこもまた、他のソ連の遺構と同じように、遠くない日に消えゆく運命かもしれない。

石碑に刻まれた文字は既に読む事は叶わない。

色あせた迷彩も瓦礫と化すのだろうか。
ラトビアのソビエトの痕跡は無慈悲にも次々と消え行くように見える。

ラトビア北東部の深い森の中。
そこに嘗てロケットミサイル基地が存在していた。

長射程の弾道ミサイルを保管する為の施設と、軍の宿舎。
数多く残る遺構と同じように小さな都市のように機能していたのだろう。

この基地は1962年に設立され、建設されて間もなくキューバ危機が起きた。
あらゆる面で緊張が史上最高に達し警戒態勢も高まった。冷戦の最盛期には有刺鉄線と電気柵に敷地が囲まれ300人を超える軍人が駐在した。

ソ連が崩壊し忘れられた軍事都市は木々に囲まれひっそりと朽ち果てていくだけと思われた。
しかし近年、辺り一帯の森林が悉く伐採されこの様だ。


私のような外部の人間が「もったいない」と言うのは烏滸がましいかもしれない。
しかし、どうしてももったいないと感じる。

この基地跡がこのような動きを見せているのは、中距離核戦力全廃条約が関係しているかもしれない。

中距離核戦力全廃条約とは、アメリカ合衆国とソビエト連邦との間に結ばれた軍縮条約の一つで、中距離核戦力(Intermediate-range Nuclear Forces、INF全廃条約)として定義された中射程の弾道ミサイル、巡航ミサイルを全て廃棄することを目的とした条約である。
しかし、アメリカは2019年2月1日に本条約の破棄をソ連の後継であるロシア連邦に通告したことを明らかにしており、これを受けてロシア連邦も条約義務履行の停止を宣言した。6ヶ月後…2019年8月1日に失効する予定である。

スクランダ1(ラトビアに存在する別のソ連の秘密軍事都市)では、現在NATOが極秘の軍事訓練を行っている。
表からでは分からないが、内部で沢山の軍人が駐在しているとの事だ。
「何の訓練してるの?こっそり教えて」
「ダメだって!」
私は阿呆だ。
ここも、第二のスクランダ1となるのか、それとも……。


ちなみにラトビアとは関係ないが、グルジアとロシアの間では緊張が高まり、アブハジアへのグルジアからの渡航が現在中止されている。



旧ソ連のキナ臭さ火薬臭さが、全体的に高まっているような…。杞憂でありたい。
ラトヴィアを知るための47章
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