忘却の彼方に消えゆく香港の廃村“馬灣大街旧村” - Ma Wan Village in Hong Kong -
2019
17
香港に残る廃村へ、フェリーで行く事になった。
フェリー!短距離ではあるけど船旅はなんだかワクワクする。

予定時刻よりだいぶ遅れてフェリーは到着した。

利用客も思ったよりも多かった。

変なノアの箱舟が見える…大きな津波が来たらあれで逃げればいいんだな…きっと。
などと思っていたらテーマパークだった。

程なくして馬湾に到着。香港新界荃湾区にある小さな島だ。
船着場を出て歩いていくと、ビーチに出た。確かこのビーチに隣接する高級チックなマンションの住人専用のビーチだった。
ダイビングは好きだけど海水浴には然程食指を唆られない。
居住区を抜け暫し歩いていくと、今回の目的地が見えた。

灣大街旧村。

元々小さい古い漁村だったが1997年の青馬大橋の開通と共に大規模な開発が始まった。
それに伴い村の住人は立ち退きを余儀無くされた。

が、実は一部住んでいる住人もまだいたりする。

嘗ての住人の多くは高級リゾートマンションの近くに新しく住宅をあてがわれそこに住んでいるとの事。

レストラン、住宅、学校、ホテルのような施設、病院と思われる施設など、殆ど残留物は残っていないが建物は朽ちながらもそのまま残っている。

まだ住んでいる近隣住人か訪れた観光客か元住人か分からないが、天后廟や至る箇所の小さな祠にお線香が供えられている。

古くから土地に住んでいる者にとって、強制退去は心が引き裂かれるような想いだったのではないだろうか。



廃墟に屡々抱く退廃美という美的観点の感情は、「当時の情景を思い起こされるから」という言葉とセットで並べられる事が多い。
しかし、他者の言う当時の情景に想いを馳せる行為というのは、当事者からしたら全くもって身勝手なエゴではないか、と思う時もある。自分の抱く感情も含めて。



自分が今まで知らなかった新しい香港の側面を見た気がした。
香港 返還20年の相克
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