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SATIAN/39 -頽廃放浪記-

廃墟/旧共産圏/未承認国家/国内外の”世界の果て”へ。ヒトノココロノスキマをキリトル頽廃放浪記。

キルギスの巨大な謎の壁画に囲まれたアーラム・オルド、カジサイのレーニン - Huge mysterious wall Aalam Ordo (Manas Village) & Lenin in Kadzhi-Saj (Kirghiz) -

2024
10


イシク・クル湖を背に、カジサイ入り口で見る事の出来る不思議な光景。



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レーニン!


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旧ソ連構成国各国でレーニン像やレリーフ、壁画などは見てきたがこのタイプのアートは初めて見る。
因みに首都ビシュケクにはこっそりこれまた珍しいタイプのレーニン像が残っている場所があるが、見せる事を頑なに拒否される…。


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1947年イシククル湖の南岸深さ0.5km地点でウラン鉱石の大規模な鉱床が発見された。
同年ウラン鉱山を運営するための秘密都市が創設された。(現在は何の変哲もない普通の集落である)
閉鎖された炭鉱や廃墟化した実験用電気機械工場などは、また別な機会に…。
尚嘗ての旧ソ連構成国の秘密都市だった集落や街は、その後誰でも入れる地図にも載る普通の街になった場所もあれば、
廃墟と化した街もあればで様々である。(どちらにせよソ連時代より衰退した事には変わりないだろう)


そしてカジサイを訪れる人間なら旅の間必ず通りがかり気が付くであろうこれまた不思議な光景、アーラムオルド。


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何処まで続くのだこの壁は…と、歩いて見ていると果てしないと感じるほど延々長く建造された壁。


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美しき壁画が描かれ見る者を圧倒する。
この赤い壁画は裏側で、表側にも壁画がある。(描かれていない壁もある)


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アーラムオルド(マナスビレッジ)の正門は閉ざされていたので、何処か入れる箇所や人はいないか探してみる。
すると明らかに誰かが出入りしている箇所があった。
そこに入ると、鶏小屋に通じていた。いきなり鶏小屋…。
鶏小屋からアーラムオルドの壁の内側に入ると、ユルト(キルギスの伝統的なテント)が建ち並んでいて人の声がした。
洗濯物も干してあり、もしかしたら住んでいる人がいるのだろうか。
無断で撮影するのも気が引けるので、まずは話せる人を探す事にした。
するとテントの中でお祈りをしている集団を見つけた。
お祈りが終わるまで待ち、お茶の時間になった頃話しかけ撮影してもいいか尋ねたら良いとの事。
後に知ったのだがこのテントに旅行者は宿泊する事も出来るようだ。
廃墟状態になっていた時代もあったようだが、少なくとも私が訪れた時には人の出入りがあった。


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海のようなイシククル湖、そこに聳え立つ明らかな違和感。


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2009年に建設されたアーラムオルドは、文化、科学、スピリチュアリティの文化複合施設になる筈だった。
キルギスの若者たちが年長者と意見を交換し、講義やカリキュラム、レッスンなしで学びを得る場所となる筈だった。
コミュニティには365棟のユルトに住み、そのうち36棟は年長者用に指定された。
これによって新しい世代を育成し、そのアイデアが遠く離れた国々にも届き、キルギスにノーベル賞をもたらす…
という壮大なビジョンがあった。
しかし、そのプロジェクトは叶わぬ夢となった。
2010年、当時の大統領クルマンベク・バキエフ氏は2010年キルギス騒乱で権力の座を追われる事となった。
そしてアーラムオルドは放棄され、現在に至るのだ。


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アーラムオルドの建設に当時如何に力を入れていたか。
色褪せているものの壮大な壁画や彫像が至る所に見られ、鷲や鷹などキルギスの伝統的なモチーフ、歴史上の出来事が描かれている。


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壁に囲まれたエリアと道路を挟んで、丘の上に聳える壁画には村を恐怖に陥れ、全ての富を奪うドラゴンが描かれている。
登るのがややキツい…。壁の近くに着いた頃には汗が噴き出した。

この壁画に描かれる物語はこういったものだ。
村の男たちが一人ずつドラゴンと戦い、ついにそのうちの一人が成功するが、全ての富を持って村に戻る代わりに、
彼自身がドラゴンに変身して村を脅かし続ける。これはキルギスにおける腐敗の連鎖を象徴している。
腐敗と戦う人々が、嘗てはシステムの一部であったにも関わらず同じように腐敗してしまったことを表している。
壁画にはビシュケクの国会議事堂が描かれており、その屋上にはスナイパーがいる。


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実際現在のキルギスに蔓延する腐敗は、旅行者なら警察とのやり取りなどで実感するのではないだろうか…。
賄賂請求が本当に酷い…。ウズベキスタン、ロシア、ウクライナ並に酷い…。
(悪魔でも個人の体験による感想です)


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そう遠くない場所には道路からも目視出来るキルギスの叙事詩『マナス』の語り手(ストーリーテラー)である
サヤクバイ・カララエフ氏(1894-1977年)の記念碑があるが、険しい山の上にあるので近くに辿り着くのは困難かもしれない。
最初中国の仏像的な何かか…?と思ったら上記の偉人らしい。


海水浴シーズンにはまだ早かったイシククル湖だったが、気温は30度を超え真夏のような気候故
冷たい湖での水浴びは気持ち良さそうだった。
アラームオルドで祈りを捧げる大人たちの外で、子どもたちは楽しそうに湖で泳いでいた。
一応私も水着は用意していたのだが、謎の遠慮があり結局泳がずこの地を後にした。



追記(2024.03.12):
クレイジージャーニーで『頓挫系テーマパーク』と写真家氏が説明していたが、違う…
同行していたガイドがテレビ業界の知人の知人なのだが(普通に他人じゃないかというツッコミはさておき…
尚ガイドは人違いなのではというツッコミは、写真家氏がガイドの名前を略称で呼んでいるシーンがあるのでそれはない)

「ベテランの彼が付いていてそれなりに説明をしている筈です。
ガイドの説明には全く聞く耳持たずなのだろうと推測します。
そもそも、テレビ番組、バラエティ番組がガバガバなのは今に始まったことではありませんし、本人たちが反省することもないでしょう。
出演者本人からのクレームならまだしも、外野の人間のそういう声には聞く耳持たないでしょうし、
コンプライアンス的に問題になることはないでしょう」



実際に自分が訪れたり追いかけている場所がこうしてテレビで想いのない人間たちによって紹介されると、
映えとネタを重視した扱いに嘆き悲しむ友人知人を見てきたが、こういう気持ちになるのだな…と、気持ちを理解してしまった…
情報が正しいかどうかなんて関係ない。それを見ている層には重要じゃない。それを届ける側にすら重要じゃない。
バラエティとは言えドキュメンタリー仕立てにしているのに、なんだかな…

尚、マイリ・スウの博物館は、ロシアではなくEU支援で作られてる。
https://www.eeas.europa.eu/delegations/kyrgyz-republic/mailuu-suu-celebrated-opening-unique-uranium-legacy-museum_en?s=301
写真家氏、テキトーな事を言わないでくれ…帰国して数ヶ月経っているのだから、調べる時間もあっただろうに。
巨大像もGoogleマップに載っているので何の像か調べもつくのに。
(ちなみにウラン鉱脈はキルギス全土に点在している。秘密都市もひとつではない)

いいテレビ番組とは、真実か否かは関係ない。

テレビでテキトーな事を言ってもファクトチェックもせず、垂れ流した侭だったりやらせ紛いの演出があっても
素知らぬ顔をしている人間より、(知見があった上で)リアルタイムでとんでもない場所へ行き面白い事を呟いてる
限界旅行者たちの方がよっぽどいい意味でクレイジーで、本物だ。
だから私個人は、ファクトチェックもロクにせず過剰演出をし続けるメディアや、見栄えが良く煌びやかな売名やバズに走る人間よりも、
きちんとした情報と事実を誠実に伝え続ける人間の方を信じている。

前回と繰り返しにはなるが、本気で旧ソ連の遺構、廃墟、モニュメント、遺産、建築などの被写体を追いかけている身としては、
ソ連の遺構をただのエンタメとして消耗している様子を見るのは哀しいものがある。
写真家氏(以前cakesで書かれていた有料記事がとても良かった記憶がある)も番組も嫌いという訳ではない、
リスペクト出来た部分も過去に沢山あっただけに、ただ哀しいだけである。


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