湯原ロープウェー/にい
2009
10
山頂から望む静寂に馳せる杜若の想い。
杜若のヨヲコ
難くなに信を貫く椿の葉のように、ヨヲコのG線は高らかに響き渡った。
ヨヲコ自身は其の華椿、たをやか且つ孤高の美熄。

ヨヲコはまるで余命幾ばくも無い夕凪のような少女だった。
曉には、為れないの。
ヨヲコは言った。
朝焼けは、いつだって残酷よ。

蝌蚪も読めぬヨヲコの奏でる音は金糸雀の一啼よりも伸びやかなフラジオレット、
水牛の叫びよりも力強いビブラート、
金色の王者の行進の如く駆け抜けるコル・レーニョ。
行き交う人の足を止め惹き付けて止まぬ其の音人魚の謌。

彼は蝌蚪を薦めたがあからさまにヨヲコに怪訝な顏をされた。
嫌いなの。泳ぐ魚って。

弓擦る松脂を彼女は少しずつ梳り粉にする。
そして其れをオブラァトに包み決まって炭酸割りの珈琲で呑むのだ。
続きます。
杜若のヨヲコ
難くなに信を貫く椿の葉のように、ヨヲコのG線は高らかに響き渡った。
ヨヲコ自身は其の華椿、たをやか且つ孤高の美熄。

ヨヲコはまるで余命幾ばくも無い夕凪のような少女だった。
曉には、為れないの。
ヨヲコは言った。
朝焼けは、いつだって残酷よ。

蝌蚪も読めぬヨヲコの奏でる音は金糸雀の一啼よりも伸びやかなフラジオレット、
水牛の叫びよりも力強いビブラート、
金色の王者の行進の如く駆け抜けるコル・レーニョ。
行き交う人の足を止め惹き付けて止まぬ其の音人魚の謌。

彼は蝌蚪を薦めたがあからさまにヨヲコに怪訝な顏をされた。
嫌いなの。泳ぐ魚って。

弓擦る松脂を彼女は少しずつ梳り粉にする。
そして其れをオブラァトに包み決まって炭酸割りの珈琲で呑むのだ。
続きます。

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